【クリエイティブになりたい人におススメ!】『フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』(読書感想)

この記事では『フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

フェルメールには以前から興味があったものの、なぜそこまで評価されているのかがよくわからなかったため、図書館にあったこちらの本を手に取りました。

 

ちなみに『フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』は、2015年に<クリスティーズ・ベスト・アーティストブック>および<ニュー・サイエンティスト・ベストリード>に選ばれ、2016年には全米技術史学会の<サリー・ハッカー賞>を受賞しています。

とても素晴らしい受賞歴を持っているため、いったいどんな本なのか、わくわくしながら読み始めました。

 

 

フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』本の概要

「不可視の世界」に挑んだ科学者と画家たち
1674年、オランダの小さな町デルフト。素人科学者アントニ・フン・レーウェンフックは自作の顕微鏡を使い、人類で初めて微生物を発見した。そのとき、広場を挟んだ向かいに住む画家フェルメールは、新しい光学機器カメラ・オブスクラを覗きこみ、光の効果をキャンバスに再現しようとしていた――

17世紀、望遠鏡と顕微鏡という新たな光学器機と理論、そして肉眼を超える驚異的な観測能力が大きな引き金となって「科学革命」が起こった。その結果、天文学、物理学、生物学、解剖学、化学は大変貌を遂げる。そして〝ものの見方〟が初めて科学の中心理念とされた。画家たちもまた、凸レンズや拡大鏡、カメラ・オブスクラを用いて自然界を観察し、昆虫や植物の細密画を描き、光と影、そして色彩と色調を捕らえようとした。しかし、そこで大きな問題に行き当たる。「肉眼で見える範囲外のものを知覚することはできるのか」? 17世紀デルフトの科学者と画家たちがもたらした「見る」ことの一大転換とは。

当時の資料からフェルメールとレーウェンフックの生涯を克明にし、レンズの製造法から視覚理論の歴史、そして実際にフェルメールが各作品に用いた遠近法と光学を詳細に解説。同時代の画家や科学者たちまで網羅する。

(引用:Amazon.co.jp

 

フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』は435ページ。ページ分量も多いですし、内容がとても濃かったので読むのに2週間はかかりました。

 

フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』勉強になったこと

フェルメールが評価されている理由

同じ画材や題材、構図を幾度となく描くことで、さまざまに条件の異なる光の描き方と、さまざまに変化する光をどう駆使すれば、さまざまな雰囲気を伝えることができるのか、フェルメールはずっと探求してきたと書かれています。

 

光学機器(=カメラ・オブスクラ)を通して見るという新たな手法を用いることで、光の加減で世界の見え方が変わることを理解し、それを作品づくりに活かしていたことが高く評価されたポイントではないかと筆者は推測しています。

 

一方で、「学んできたことや見たものを、何も考えずにそのまま描く画家は鏡と同じ」というダ・ヴィンチの言葉を教訓にし、時には光学原理を無視して、自分の表現したい構図と伝えたい感情に合わせることもありました。

 

また、男性の視線を意識して美化された女性ではなく、ひとりの個性ある人間として女性を描いた点もフェルメールの絵の特徴であると書かれています。

 

常識を疑うことの大切さ

17世紀に顕微鏡が発明されたことで、自然哲学者たちは裸眼では見えないものを観察できるようになりました。

 

そのため、それまでの理論や伝統などを一度取っ払って、観察に取り組む自然哲学者が増えたそうです。

 

その際、自分の先入観や思い込みを抑え込んで、自然界を観察するのに苦労したそうで、"見るための訓練"が必要だったそうです。

 

今も"常識を疑うことの大切さ"がよく言われていますが、それはこの時代から来ているのかもしれませんね。

 

自然に対する考え方

この時代、科学は「神の御業を研究し、神について更に深く理解する学問」と位置付けられていたとのこと。

 

「自然哲学者も画家も、眼に見える世界を描写し、その根底にある眼に見えない存在(=創造主)に意識を向けるべし」と科学者のファン・ホーホーストラーテンは言っていたそうです。

 

自然の1つ1つに対して、それを創りあげた神様を感じるという考え方は、なんだか日本の神道とも通じるところがありそうですね。

 

また、そんなネーデルラント人にとって絵画とは「自然を描写するもの」であり、それまで西洋絵画の主流とされてきたイタリア人にとっては「物語を語るもの」であったそうです。

フェルメールなどのオランダ人画家は、日常の風景を切り取って描いている絵が多いですので、きっとそのような考え方が前提としてあったんですね。

 

終わりに

フェルメールもレーウェンフックも、"新たな世界の見方"を用いることで、新たな画風を創り出したり、新たな発見をしたりしました。

 

この本を読んで、自分の思い込みや先入観を捨てて"世界を見る"ことの大切さを改めて実感することができました。

 

また、アートと科学はかけ離れたものと思っていましたが、深く関係していることもこの本から学ぶことができました。

 

私自身の専門分野も、他の分野と掛け合わせることで新しいものが生まれる可能性がありますし、視野を広げて、様々な分野を学ぶことも大切ですね。