【日本のアートを学びたい人におススメ】『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』(読書感想)

この記事では『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

先日、映画「HOKUSAI」を観に行ってきました。

 

映画はとても面白く、北斎が生きた時代背景、北斎を育てた人物などについて学ぶことができました。

 

もっと北斎について知りたい!そんな想いが強くなったので、図書館で見つけたこちらの本を読んでみることにしました。

 

 

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』本の概要

「神奈川沖浪裏」や「赤富士」など『富嶽三十六景』の作者としてられる葛飾北斎
ライフ誌は1999年に「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に、
北斎を日本人としてただ一人ランクインさせた(86位)。
しかし、世界に最も知られている日本人画家の実像は、実は知られていない。

「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」などインパクトのある役者絵の作者として知られる東洲斎写楽
わずか10か月で忽然と姿を消した謎の画家・写楽こそ、実は北斎だったのである!
写楽=北斎である動かしがたい証拠も発見された。
写楽=北斎となれば、北斎の評価はなお一層高まる。

本書では、世界で最も知られた日本人=北斎の、知られざる実像を明らかにするとともに、
世界に大きな影響を及ぼした、本当のすごさについて、わかりやすく解説する。

【目次より】
序 章 「世界の人物100人」に選ばれた葛飾北斎
第1章 北斎こそが写楽である
第2章 なぜ写楽は10か月で姿を消したのか
第3章 写楽作といわれる二枚の肉筆画が伝えていること
第4章 葛飾北斎の誕生――春朗・写楽を超えて北斎
第5章 日本人の自然信仰が描かれた『富嶽三十六景
第6章 北斎が最晩年にたどり着いた場所
第7章 キリスト教世界の絵画を変えた北斎の偉大さ

【著者プロフィール】
田中英道(たなか・ひでみち)
昭和17(1942)年東京生まれ。東京大学文学部仏文科、美術史学科卒。ストラスブール大学に留学しドクトラ(博士号)取得。文学博士。東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者として活躍する一方、日本美術の世界的価値に着目し、精力的な研究を展開している。また日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会の代表を務める。著書に『日本美術全史』(講談社)、『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『日本の文化 本当は何がすごいのか』『世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『世界文化遺産から読み解く世界史』『日本の宗教 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本の美仏50選』(いずれも育鵬社)などがある。

(引用:Amazon.co.jp

 

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』は全183ページ。読みやすい文章でしたので、3~4日で読み終わりました。

 

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』勉強になったこと

北斎の名前の由来、本質

北斎の「北」という字は北極星や北斗七星に由来していると映画でも説明がありました。

こちらの本では、北極星や北斗七星を神格化した菩薩、「妙見菩薩」に対する信仰からこのような名前を付けたのではと書かれています。

妙見菩薩とは、国土を擁護し、災害を減除し、人の福寿を増す菩薩だそうです。

このため、「北」という字には共同体や国家という意味が含まれていると考えられています。

 

一方で、「斎」という字は、整えて表現していくという意味を持っているそうです。

「共同体を整えて表現する」という北斎、奥が深いですね。

 

日本の自然信仰とヨーロッパに与えた影響

北斎は「師造化」(=唯一の師は造化)という言葉を大切にしていたそうです。

 

「造化」とは自然の摂理や天地宇宙そのものを意味していて、「師造化」は日本の自然信仰や自然を中心とした文化に基づいている言葉と考えられます。

このことは、富士山が自然の中で変化する様子を描いた「富嶽三十六景」にも表れています。

 

また、西洋ではレオナルド・ダ・ヴィンチが自然の原理を追求し、現代の科学に通じるような思考をしていたのに対し、北斎はあらゆる物事を観察し、肯定的に受け入れ、自然の生きた感覚を見て喜び、絵を描いていたそうです。

 

科学的思考は求めず、あるがままの自然を、独自の視点で描いた北斎

そのような姿勢が、ヨーロッパのジャポニズムを引き起こし、ひいては印象派の活動に繋がったのかもしれませんね。

 

北斎の人間に対する見方

北斎が描いた『赤壁曹操図』では、戦場で悠々と詩を読む曹操の姿が描かれています。

 

このことから、戦争や政治という外的な動きよりも、詩を詠むという内的な姿を本当の人生、人間の普遍的な姿として見ているのではないか、と書かれています。

 

内的な動きに人間の普遍的な姿を見出すところは、現代の「仕事だけではなく、家庭や趣味も大切にしよう」という考え方に似ている気がします。

 

終わりに

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』では、芸術には普遍性が不可欠だということが書かれています。

 

人々がそこに普遍性を感じることがなければ芸術にはならない。つまり、個々の人間を超えた普遍性がなければ、それは芸術として感じられない。

 

色んな本を読み、「アートって結局なんだろう…?」とこれまでよくわからなかった私にとっては、「普遍性」がアートを構成する概念の1つなんだなと学ぶことができました。

 

それだけではなく、上記に書いたように自然や人間に対する北斎の考え方などが学べて、とても勉強になりました。