『現代アートとは、何か』(読書感想)

この記事では『現代アートとは、何か』の紹介、読んだ感想をまとめています。

これまでも現代アートの展覧会に足を運ぶことはあったのですが、どう鑑賞していいか、作者の伝えたいことを把握するためにはどうすればいいのか等、現代アートについてもっと知りたいと思ったので、こちらの本を手に取りました。

 

読むのにそれなりの時間はかかるのですが、現代アートの鑑賞法から現代アートが抱える問題点まで、現代アートについては幅広く知ることのできる本となっています。

 

 

 

現代アートとは、何か』本の概要

◉[書籍紹介]
現代アートを司るのは、いったい誰なのか?
世界的企業のトップや王族などのスーパーコレクター、暗躍するギャラリスト、資本主義と微妙な距離を保つキュレーター、存在感を失いつつも反撃を試みる理論家、そして新たな世界秩序に挑むアーティストたち……。日本からはなかなか見えてこない、グローバル社会における現代アートの常識(ルール)=本当の姿(リアル)を描きつつ、なぜアートがこのような表現に至ったのか、そしてこれからのアートがどのように変貌してゆくのかを、本書は問う。
さらに、これら現代アートの「動機」をチャート化した「現代アート採点法」によって、「難解」と思われがちなアート作品が目からウロコにわかりはじめるだろう。
アートジャーナリズムの第一人者による、まったく新しい現代アート入門。

◉[推薦]浅田彰
多文化主義が多様な価値を生み出す一方、それらを通約するものといえばグローバルなアート・マーケットにおける価格しかない——そんな現状を打破するために必要なのは、批評の再生だ。
ただの情報コラムではない。勉強の成果をひけらかすための小難しい論文でもない。アートの理論や歴史から経済や社会の現実までを横断する真の意味でジャーナリスティックな批評。
現代アートとは何か』は、そういうジャーナリスティックな批評のベースとなる最良のガイドブックである。

◉[本文より]
本書では、現代アートの価値と価格を決めている人々、つまり狭義のアートワールドの構成メンバーを紹介し、併せて「現代アートとは何か」を考えてゆく。輪郭の曖昧なその集合体が現代アートの価値を決めている。それが正当なことなのか、彼らにその権利があるかどうかは読み進めるうちにわかっていただけると思う。そのときには、「現代アートの価値とは何か」という大仰な問いの答も、自ずと明らかになっているはずだ。

◉[目次]
序章 ヴェネツィアビエンナーレ——水の都に集まる紳士と淑女
I マーケット——獰猛な巨竜の戦場
II ミュージアム——アートの殿堂の内憂外患
III クリティック——批評と理論の危機
IV キュレーター——歴史と同時代のバランス
V アーティスト——アート史の参照は必要か?
VI オーディエンス——能動的な解釈者とは?
VII 現代アートの動機
VIII 現代アート採点法
IX 絵画と写真の危機
終章 現代アートの現状と未来

(引用:Amazon.co.jp

現代アートとは、何か』は、全419ページ。ページの分量も多く、読みごたえのある内容だったので読むのに2週間かかりました。

 

現代アートとは、何か』勉強になったこと

本の内容は終章に簡単にまとめらています。

こちらでは、そちらの終章の内容をさらに簡単にまとめていきたいと思います。

 

アートワールドの現状

アートワールドは矛盾に満ちている

アーティスト、キュレーター、批評家、ジャーナリストなどの多くはグローバル資本主義を批判しているが、日々の糧をそこから得ている者が少なくない。

アートマーケットは加熱する一方である

スーパーコレクター同士の争いは激化していて、希少な作品の奪い合いは価格の高騰をもたらす。

美術館とアーティストは様々な圧力に曝されている

表面的には表現の自由を認めている国でも、助成金など経済的支援の停止を仄めかすなど、水面下での圧力が存在する。

作品の特権的な私有化や囲い込みが進んでいる

富裕なコレクターや財閥・企業が開いた私立美術館が、公的助成金を受けながら実質的に一般公開されていないことが問題視されている。

公共財である芸術作品を私物化しようとする一握りの人々によって、文化遺産が広く共有されず、アートシーンが沈滞化していくことが懸念されている。

巨大美術館はポピュリズムに陥り始めている

テート・モダンが展示面積の拡大を機に「他社と過ごす社会的・社交的な場」を目指すという方針を明らかにしたように、巨大美術館はテーマパーク化しつつある。

批評や理論は影響力を失っている

『アートフォーラム』などの専門誌は広告で占められ、業界人でさえ批評を読まなくなっている。

 

今日のアートとアーティスト

アートの潮流は1989年を境に変わった

冷戦構造が崩壊した1989年に、ポストコロニアリズムとマルチカルチュラリズムが導入され、これを機に非西洋のアートも注目されるようになった。

今日のアーティストは、かつてとは大きく異なる

『世界標準』のアートは、アート史への言及や、先行作品の引用がなければならないとされている。

一方、現代では政治的・社会的なメッセージを作品に込める作家が増えており、メッセージ性が強い作品において、言及や引用が本当に必要なのか検証する必要がある。

今日のアートは選択・判断・命名による知的活動となった

現代アーティストが行うのは、選択し、命名し、新たな価値を与えることであり、鑑賞者も同じことをする。

ただし、鑑賞者は「能動的な解釈者」にならねばならず、鑑賞者が解釈することによって作品は初めて完成される。

今日のアートはすべからくコンセプチュアル・アートであるべき

「選択・命名・新たな価値の付与」によって成立する現代アートにとって、最も重要なのは観念あるいは概念であり、本質は外見にはない。

インパクト・コンセプト・レイヤーが現代アートの3大要素

インパクトは「かつてなかったような視覚・感覚的な衝撃」。コンセプトは「作家が訴えかけたい主張や思想、知的なメッセージ」。レイヤーは「鑑賞者に様々なことを想像、想起、連想させる重層的に作品に組み込まれた感覚的・知的要素」。

良いアート作品はこの3要素によって鑑賞者の想像力を刺激する。

現代アートの作家が抱く創作の動機は、大別して7種ある

「新しい視覚・感覚の追求」「メディウムと知覚の探求」「制度への言及と意義」「アクチュアリティと政治」「思想・哲学・科学・世界認識」「私と世界・記憶・歴史・共同体」「エロス・タナトス・聖性」がその7つ。

作品の鑑賞とはレイヤーの読み解きによる動機の推理であり、動機の度合いと達成度の数値化が作品読解の助けとなることがある。

今後のアートはインスタレーションを志向する

コンセプトが格段に優れている作品を除くと「眼差しそのものを形成」し、観客の五感に訴えるインスタレーションの時代が到来している。

 

終わりに

同じく終章に、以下の文章が書かれています。

アートが世界を変えたり、人間を救ったりすることはまずないだろう。だが、アートを通じて世界の問題に関心を抱くようになれば、歴史はほんの少しだけ動くかもしれない。同じく、アートを通じて人間とは何かという問題に思いを馳せるようになれば、我々の人生は少しだけ違って見えるかもしれない。その意味で、現代アートの鑑賞とアートについて考えることは、実は、「世界とは何か」「歴史とは何か」「我々とは何者か」という大きな問題と通底している。

現代アートは難解でよくわからないものと思われることもありますし、実際私もそのように思っていました。

しかしこの本を通じて、現代アートの読み解き方が何となくわかりましたし、現代アートを鑑賞することの意義も理解できました。

現代アートについて知りたいと思っている方はまずこの本を読むことをおすすめします。

『「こだわりが収入になる!」インスタグラムの新しい発信メソッド』(読書感想)

この記事では『「こだわりが収入になる!」インスタグラムの新しい発信メソッド』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

最近仕事でインスタグラムのアカウントを管理することになりました。

できるだけ多くの人に情報を発信していきたいので、どうしたらフォロワー数を増やすことができるのか知りたいと思い、こちらの本を読むことにしました。

 

 

『「こだわりが収入になる!」インスタグラムの新しい発信メソッド』本の概要

インスタグラムをただ投稿しているだけではもったいない!
フォロワー数を増やし、企業からお仕事案件をもらい、
コツコツ稼いじゃおう。

有名人の真似をしても意味はありません。
「自分だけのテーマ」「統一感ある写真撮影」「徹底したプロフィール画面のつくり込み」「『いいねまわり』の方法とアカウントの見つけ方」「狙い目のハッシュタグの探し方」…etc.
肩書きなし・知名度なしの普通の主婦が、自力で10ヶ月で1万フォロワーを獲得し、収入を得てきたメソッドを、すべて公開します!

一般人が憧れのインスタグラマーになって“自分らしく稼ぐ"リアルなノウハウを詰め込んだ1冊!

-----著者からのメッセージ-----

インスタグラマーになると開ける道

「インスタグラマー」。みなさんはこの言葉にどういうイメージを持ちますか?
多くの方が“自撮りと一緒に商品を投稿するモデルみたいな人"と想像するかもしれません。

しかし、これから私が本書でお伝えしていく「インスタグラマー」とは、
“自分の強みやこだわり、あるいは、誰かに伝えたいことを発信する人"のことで、
その人それぞれに合った商品のPR 案件がお仕事として依頼されたり、旅に行けたり、企業と一緒に企画をすることができたり……。

このように、好きなことに使ってきた時間やお金が、
誰かにとっての価値となり、
インスタグラムで投稿すること自体がお仕事となる人のことなのです。

この可能性が詰まった広い世界に一歩踏み出してみませんか?

-----(巻頭メッセージより)-----

 

『「こだわりが収入になる!」インスタグラムの新しい発信メソッド』は全221ページ。

読みやすい本ですので、3~4日で読み終えました。

 

『「こだわりが収入になる!」インスタグラムの新しい発信メソッド』勉強になったこと

テーマ・投稿内容

最も基本的なこととして、フォロワー数を増やしたければ「見ている人にとって有益な情報を投稿すること」が重要と書かれていました。

ライフスタイル投稿は有名人だからこそ成立するのであり、一般の人がそのような投稿をしてもフォロワー数を増やすのは難しいとのこと。

さらに有益な情報を発信するにあたっては「商品か場所のどちらかは外にあるものを紹介する」もしくは「工程から紹介する」ことがおすすめと書かれていました。

例えば、自分で作ったパンの写真をアップするのではなく、パン作りの工程からアップするか、お店で買ったパンの情報をアップするか、などの方が見ている人にとっては参考になりますよね。

プロフィール文にも「そのアカウントから何が得られるか」を明記したほうが、フォロワー数アップにはつながるそうです。

 

また、インスタと相性のよいテーマは「美容」「ファッション」「お出かけ系(特にカフェ)」だそうで、インスタのターゲット層(10~30代の女性が多い)を考えると確かにこれらのテーマに関心がありそうだなと感じました。

 

コンテンツの工夫

投稿する写真は以下の3点を押さえて、撮影するとよいと書かれていました。

①縦位置で写真を撮る+上下に余白を残す

②水平or垂直に撮る

③いらないものを写さない

 

また、文字入りコンテンツにすることで1投稿あたりの滞在時間を延ばすことができ、それにより良質なアカウントと見なされてタイムラインに上がってきやすい、とも書いてありました。

少し手間はかかりますが、その分だけ効果はありそうですね。

 

拡散の方法

拡散するためにハッシュタグを工夫したり、「いいね回り」をするとよいと書かれていました。

 

ハッシュタグの選び方

①撮影した場所・店舗と関連のあるワードを入れる

②撮影した関連場所の範囲を広げていく

③写っている人やものを抽象化させ、コミュニティ性のあるワードを取り入れる

④メディア系タグを入れる

⑤その他、写真と関連のあるワードを入れる

 

「いいね回り」の仕方

①類似アカウントで自分より少し質の低いアカウントを見つける

②そのフォロワーの1アカウントにつき、3つの投稿に「いいね」していく

③疑問に残るアカウントに出会う

④アカウントのフォロー数がフォロワー数の1/4以下であれば、そのフォロワーに「いいね回り」をしていく

 

終わりに

記事では詳しく書いていませんが、こちらの本では企業から仕事をもらうための方法やロードマップについても書かれていました。

個人でも発信しやすくなる中で、今後も様々なツールを使いながら、フリーランスで稼いでいく人が多くなるんだろうなと感じました。

これからどんなツールが出てくるかわかりませんが、「美しいものを見たい」という人間の根源的な欲望に応えられているインスタは、しばらくは無くならないのかなとも思います。

『八つの日本の美意識』(読書感想)

この記事では『八つの日本の美意識』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

映画"HOKUSAI"を観て、北斎が活動した時代背景などはよくわかりました。

しかし、どのような価値観・考え方を基にして、絵を描いていたかはよくわからなかったので、『八つの日本の美意識』を読んでみることにしました。

 

 

『八つの日本の美意識』本の概要

建築・料理・デザインはもとより、人間の存在そのものにおいて、世界的に、日本の文化と美意識についての関心が高まっている。ともすれば日本人自身が忘れがちなその美意識を再認識するための必読書。

(引用:Amazon.co.jp

 

 

『八つの日本の美意識』は全189ページ。読みやすい文章なので3~4日で読み終わりました。

 

『八つの日本の美意識』勉強になったこと

『八つの日本の美意識』では、日本の美意識を理解するためのキーワードとして以下1~8を挙げています。

 

❶微

細部に全てが含まれるという意識。(ex.短縮後、幕の内弁当、"一期一会")

細部が全体への配慮を持っているということでもあり、日本の都市にもその構造が表れている。

日本では個々の家屋が中心で、それらが単に集合することで、都市が出来上がっている一方、西洋では都市が優先され、建築はその一部分に過ぎない。

そのため、日本人は自分を中心とした空間の捉え方をするようになり、公共意識が欠如しているのではないかというのが黒川氏の主張。

 

❷並

並列的な、上下関係のない複数の細部の単なる集合だけで、調和が生まれるという考え方。

日本人は宗教さえも並列的に扱うため、同時に複数の宗教を持つことができる。

また、西洋が「罪の意識」を価値基準としているのに対し、日本は「恥の意識」を価値基準としていて、他者への気遣いによって秩序が成り立っている。

 

❸気

人はその身体から周辺に"気配"という空間の広がりを持っていて、その外に拡がる空間も人に属する。

日本の家屋は、複数の柱や梁が寄り集まって、その気配が重なり合ってできている。

また、一軒一軒が隣の家の"気配"を感じながら、"間合い"を設けてつくられていく集合のかたちが、日本の街や村。

 

❹間

「気」が空間や時間となったものが「間」。

日本では、建築自体が柱と梁で囲まれて生まれる「間」として作られた。(ex.居間、床の間など)

また、絵画では、「間」(余白)を描くことで、受け手が参加しやすいように仕掛けられている。

 

❺秘

全てを表現しないことで受け手の想像力を駆り立てること。

人の心に働きかけて、その想像力を刺激して、知る気にさせる仕掛け。

 

❻素

そのままが一番美しい、できることなら手を加えない方がいいという考え方。

自然への大きな信頼と、人の技を「見せる」ことへの否定が、この考え方の根底にある。

また、つくることを最少にしようという姿勢は、ものづくりの原型的な発想を生み出した。(ex.着物、数寄屋)

 

❼仮

生きているのも死ぬのも、みんなたまたまそうなのだということを認めようという考え方。

移り変わるこの世界のすべてを受容しようという意識が、「仮」の背後にある。

 

❽破

最も破壊的な瞬間に、最も生命的なことが起こるという考え方。

千利休の「守破離」では、「その道を極めるためには、修練を積まなくてはならない。そうして、もうこれ以上どうすることもできないというところにきたとき、伝統的な型を破り、自分独自の新しい世界を見つけることができる。」と言われている。

 

終わりに

『八つの日本の美意識』を読み、日本人の価値基準などについて学ぶことができましたが、あまり日本のアート作品をしっかりと見てこなかったため、ここで書かれていることが合っているのかどうか、あまり腑に落ちませんでした。

 

日本のアート作品の展覧会にも足を運んで、上記の美意識が作品の中に見つけられるかどうか、確かめてみたいと思います。

【日本のアートを学びたい人におススメ】『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』(読書感想)

この記事では『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

先日、映画「HOKUSAI」を観に行ってきました。

 

映画はとても面白く、北斎が生きた時代背景、北斎を育てた人物などについて学ぶことができました。

 

もっと北斎について知りたい!そんな想いが強くなったので、図書館で見つけたこちらの本を読んでみることにしました。

 

 

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』本の概要

「神奈川沖浪裏」や「赤富士」など『富嶽三十六景』の作者としてられる葛飾北斎
ライフ誌は1999年に「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に、
北斎を日本人としてただ一人ランクインさせた(86位)。
しかし、世界に最も知られている日本人画家の実像は、実は知られていない。

「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」などインパクトのある役者絵の作者として知られる東洲斎写楽
わずか10か月で忽然と姿を消した謎の画家・写楽こそ、実は北斎だったのである!
写楽=北斎である動かしがたい証拠も発見された。
写楽=北斎となれば、北斎の評価はなお一層高まる。

本書では、世界で最も知られた日本人=北斎の、知られざる実像を明らかにするとともに、
世界に大きな影響を及ぼした、本当のすごさについて、わかりやすく解説する。

【目次より】
序 章 「世界の人物100人」に選ばれた葛飾北斎
第1章 北斎こそが写楽である
第2章 なぜ写楽は10か月で姿を消したのか
第3章 写楽作といわれる二枚の肉筆画が伝えていること
第4章 葛飾北斎の誕生――春朗・写楽を超えて北斎
第5章 日本人の自然信仰が描かれた『富嶽三十六景
第6章 北斎が最晩年にたどり着いた場所
第7章 キリスト教世界の絵画を変えた北斎の偉大さ

【著者プロフィール】
田中英道(たなか・ひでみち)
昭和17(1942)年東京生まれ。東京大学文学部仏文科、美術史学科卒。ストラスブール大学に留学しドクトラ(博士号)取得。文学博士。東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者として活躍する一方、日本美術の世界的価値に着目し、精力的な研究を展開している。また日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会の代表を務める。著書に『日本美術全史』(講談社)、『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『日本の文化 本当は何がすごいのか』『世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『世界文化遺産から読み解く世界史』『日本の宗教 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本の美仏50選』(いずれも育鵬社)などがある。

(引用:Amazon.co.jp

 

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』は全183ページ。読みやすい文章でしたので、3~4日で読み終わりました。

 

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』勉強になったこと

北斎の名前の由来、本質

北斎の「北」という字は北極星や北斗七星に由来していると映画でも説明がありました。

こちらの本では、北極星や北斗七星を神格化した菩薩、「妙見菩薩」に対する信仰からこのような名前を付けたのではと書かれています。

妙見菩薩とは、国土を擁護し、災害を減除し、人の福寿を増す菩薩だそうです。

このため、「北」という字には共同体や国家という意味が含まれていると考えられています。

 

一方で、「斎」という字は、整えて表現していくという意味を持っているそうです。

「共同体を整えて表現する」という北斎、奥が深いですね。

 

日本の自然信仰とヨーロッパに与えた影響

北斎は「師造化」(=唯一の師は造化)という言葉を大切にしていたそうです。

 

「造化」とは自然の摂理や天地宇宙そのものを意味していて、「師造化」は日本の自然信仰や自然を中心とした文化に基づいている言葉と考えられます。

このことは、富士山が自然の中で変化する様子を描いた「富嶽三十六景」にも表れています。

 

また、西洋ではレオナルド・ダ・ヴィンチが自然の原理を追求し、現代の科学に通じるような思考をしていたのに対し、北斎はあらゆる物事を観察し、肯定的に受け入れ、自然の生きた感覚を見て喜び、絵を描いていたそうです。

 

科学的思考は求めず、あるがままの自然を、独自の視点で描いた北斎

そのような姿勢が、ヨーロッパのジャポニズムを引き起こし、ひいては印象派の活動に繋がったのかもしれませんね。

 

北斎の人間に対する見方

北斎が描いた『赤壁曹操図』では、戦場で悠々と詩を読む曹操の姿が描かれています。

 

このことから、戦争や政治という外的な動きよりも、詩を詠むという内的な姿を本当の人生、人間の普遍的な姿として見ているのではないか、と書かれています。

 

内的な動きに人間の普遍的な姿を見出すところは、現代の「仕事だけではなく、家庭や趣味も大切にしよう」という考え方に似ている気がします。

 

終わりに

葛飾北斎 本当は何がすごいのか』では、芸術には普遍性が不可欠だということが書かれています。

 

人々がそこに普遍性を感じることがなければ芸術にはならない。つまり、個々の人間を超えた普遍性がなければ、それは芸術として感じられない。

 

色んな本を読み、「アートって結局なんだろう…?」とこれまでよくわからなかった私にとっては、「普遍性」がアートを構成する概念の1つなんだなと学ぶことができました。

 

それだけではなく、上記に書いたように自然や人間に対する北斎の考え方などが学べて、とても勉強になりました。

【文章を書く人におススメ】『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』(読書感想)

この記事では『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

仕事上、これまで書いたことのないテイストの文章を書くことが求められるようになり、そのヒントを求めてこの本を買いました。

 

作者の能勢氏はananの元編集長だそうで、そういった方が書いた本であれば、思わず読みたくなるような文章の書き方を学べると感じました。

 

 

『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』本の概要

企画書や記事を一生懸命つくったのになかなか読んでもらえない。
商品やサービスのPRを頑張っているのに思うように売れない。
……ともどかしい思いをした経験はありませんか。
どんなに素晴らしいコンテンツも人に届かなければ意味がありません。

本書では、
雑誌・書籍の編集者として活躍し
webメディアのディレクション
コンテンツマーケティングも行う著者が、
「読まれる」「売れる」言葉をつくるのに必要なことだけを
余すところなく紹介し尽くします。

知名度80%が流行語の使いごろ
・和語を使うとはんなり感があふれ出す
・中身勝負のときは安定感の定型パターン
・ヒットメーカーが大事にしていたお茶会
・読者を途中で飽きさせない工夫

といった内容はもちろん、

・先を聞きたくなるプレゼンづくりの秘策
・ひと目で伝わるビジネス文書とは?
・文章やメールがスラスラ書けるコツ

など、ビジネスに役立つトピックも満載。

どれも一度身につければ一生使える、
文章をつくるすべての人にぜひ知ってほしい技術です。

(引用:Amazon.co.jp

『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』は205ページ。読みやすい本ですので1週間で読み終わりました。

 

『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』勉強になったこと

 言葉をつくるにあたっての姿勢

つくるもの(記事など)に誠実に向き合って、それを丁寧に言葉にすることが最も大切と書かれています。

 

キャッチコピーの技術に関しては多くの書籍が出されていますが、つくるものに向き合わずに技術だけ用いても、人を引き付ける言葉は作れないとのことです。

 

編集の定義は「誰かになにかを魅力的に伝えること」。対象の"売り"をしっかり考えることで、惹かれる言葉をつくることができると本書から学びました。

 

言葉をつくる手順

記事を書く際に、取材する対象を決めた時点で、対象の"売り"、書くことを決めるとスムーズに記事を書くことができると書かれています。

 

そのうえで、取材の中で感動した"想い"を書き出して、"売り"を1つに絞り込むとよいそうです。

 

また、コンテンツを企画する段階から始める際には、直接読者と話をして、自分の"想い"を浮き出したうえで、企画の発想や記事のテイストなどを考えるのが有効と書いてあります。

相手の気持ちになり、読者の潜在的な望みまで把握することで、読者に響く企画を創り出せるということですね。

 

言葉を磨く

「伝えたいこと」が瞬時に伝わる言葉、ニュアンスを含め正確に伝わる言葉が、結果として「強い言葉」になると能勢氏は書いています。

 

そのための言葉の磨き方として、どういう時にどのような言葉を使うとよいのか、以下のように書かれていました。

  • ニュアンスを含めて正確に伝えたいとき→メタファー、擬人化
  • 五感を盛り込んで伝えたいとき→オノマトペ
  • 優しいニュアンス(はんなり感)を出したいとき→和語
  • 言葉の意味を膨らませたいとき→ひらがな、カタカナ
  • 言葉そのものを強調したいとき→かぎかっこ、句点
  • リズム感を出したいとき→7-5拍(7拍、5拍の単体でも◎)

 

注意事項として書かれていたのは常套句。意味のないものとして言葉を聞き流してしまう効果があるそうです。

 

終わりに

『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』の「おわりに」に書かれていた女優の木内みどりさんの言葉がとても心に残りました。

 

心の底から歌いたくて歌いたくて歌いたいから歌う。体の底から踊りたくて踊りたくて踊りたいから踊る。そのエネルギーが、ものづくりの原点でしょう?

 

なにかの文章を書くときにも、本来は「伝えたいから伝える」はずです。

 

仕事に追われているとそんなことも忘れていることがあるのですが、今一度"想い"を大切にして文章を書いていこうと思いました。

 

 

 

 

【クリエイティブになりたい人におススメ!】『フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』(読書感想)

この記事では『フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

フェルメールには以前から興味があったものの、なぜそこまで評価されているのかがよくわからなかったため、図書館にあったこちらの本を手に取りました。

 

ちなみに『フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』は、2015年に<クリスティーズ・ベスト・アーティストブック>および<ニュー・サイエンティスト・ベストリード>に選ばれ、2016年には全米技術史学会の<サリー・ハッカー賞>を受賞しています。

とても素晴らしい受賞歴を持っているため、いったいどんな本なのか、わくわくしながら読み始めました。

 

 

フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』本の概要

「不可視の世界」に挑んだ科学者と画家たち
1674年、オランダの小さな町デルフト。素人科学者アントニ・フン・レーウェンフックは自作の顕微鏡を使い、人類で初めて微生物を発見した。そのとき、広場を挟んだ向かいに住む画家フェルメールは、新しい光学機器カメラ・オブスクラを覗きこみ、光の効果をキャンバスに再現しようとしていた――

17世紀、望遠鏡と顕微鏡という新たな光学器機と理論、そして肉眼を超える驚異的な観測能力が大きな引き金となって「科学革命」が起こった。その結果、天文学、物理学、生物学、解剖学、化学は大変貌を遂げる。そして〝ものの見方〟が初めて科学の中心理念とされた。画家たちもまた、凸レンズや拡大鏡、カメラ・オブスクラを用いて自然界を観察し、昆虫や植物の細密画を描き、光と影、そして色彩と色調を捕らえようとした。しかし、そこで大きな問題に行き当たる。「肉眼で見える範囲外のものを知覚することはできるのか」? 17世紀デルフトの科学者と画家たちがもたらした「見る」ことの一大転換とは。

当時の資料からフェルメールとレーウェンフックの生涯を克明にし、レンズの製造法から視覚理論の歴史、そして実際にフェルメールが各作品に用いた遠近法と光学を詳細に解説。同時代の画家や科学者たちまで網羅する。

(引用:Amazon.co.jp

 

フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』は435ページ。ページ分量も多いですし、内容がとても濃かったので読むのに2週間はかかりました。

 

フェルメールと天才科学者:17世紀オランダの「光と視覚」の革命』勉強になったこと

フェルメールが評価されている理由

同じ画材や題材、構図を幾度となく描くことで、さまざまに条件の異なる光の描き方と、さまざまに変化する光をどう駆使すれば、さまざまな雰囲気を伝えることができるのか、フェルメールはずっと探求してきたと書かれています。

 

光学機器(=カメラ・オブスクラ)を通して見るという新たな手法を用いることで、光の加減で世界の見え方が変わることを理解し、それを作品づくりに活かしていたことが高く評価されたポイントではないかと筆者は推測しています。

 

一方で、「学んできたことや見たものを、何も考えずにそのまま描く画家は鏡と同じ」というダ・ヴィンチの言葉を教訓にし、時には光学原理を無視して、自分の表現したい構図と伝えたい感情に合わせることもありました。

 

また、男性の視線を意識して美化された女性ではなく、ひとりの個性ある人間として女性を描いた点もフェルメールの絵の特徴であると書かれています。

 

常識を疑うことの大切さ

17世紀に顕微鏡が発明されたことで、自然哲学者たちは裸眼では見えないものを観察できるようになりました。

 

そのため、それまでの理論や伝統などを一度取っ払って、観察に取り組む自然哲学者が増えたそうです。

 

その際、自分の先入観や思い込みを抑え込んで、自然界を観察するのに苦労したそうで、"見るための訓練"が必要だったそうです。

 

今も"常識を疑うことの大切さ"がよく言われていますが、それはこの時代から来ているのかもしれませんね。

 

自然に対する考え方

この時代、科学は「神の御業を研究し、神について更に深く理解する学問」と位置付けられていたとのこと。

 

「自然哲学者も画家も、眼に見える世界を描写し、その根底にある眼に見えない存在(=創造主)に意識を向けるべし」と科学者のファン・ホーホーストラーテンは言っていたそうです。

 

自然の1つ1つに対して、それを創りあげた神様を感じるという考え方は、なんだか日本の神道とも通じるところがありそうですね。

 

また、そんなネーデルラント人にとって絵画とは「自然を描写するもの」であり、それまで西洋絵画の主流とされてきたイタリア人にとっては「物語を語るもの」であったそうです。

フェルメールなどのオランダ人画家は、日常の風景を切り取って描いている絵が多いですので、きっとそのような考え方が前提としてあったんですね。

 

終わりに

フェルメールもレーウェンフックも、"新たな世界の見方"を用いることで、新たな画風を創り出したり、新たな発見をしたりしました。

 

この本を読んで、自分の思い込みや先入観を捨てて"世界を見る"ことの大切さを改めて実感することができました。

 

また、アートと科学はかけ離れたものと思っていましたが、深く関係していることもこの本から学ぶことができました。

 

私自身の専門分野も、他の分野と掛け合わせることで新しいものが生まれる可能性がありますし、視野を広げて、様々な分野を学ぶことも大切ですね。

【物事の本質を考えられるようになりたい人におススメ!】『池上彰の教養のススメ』(読書感想)

この記事では『池上彰の教養のススメ』の紹介、読んだ感想を紹介しています。

 

先日も出口氏の『人生を面白くする本物の教養』という教養に関する本を紹介しましたが、他の方が教養に関してどのように認識しているかも知りたかったので、こちらの本を読んでみることにしました。

 

 

池上彰の教養のススメ』本の概要

☆なぜ今、教養?

21世紀の日本にいちばん足りないのが「教養」だから。
1990年代、文部省が大学のカリキュラムを実学一辺倒にして、大学で教養の地位が低下した。企業も、英語やITスキルや各種資格を重視して、
人材を採るようになった。結果、日本からは、クリエイティブな商品、新しいサービス、美しいデザインが生まれなくなった。
「すぐに役には立たない」教養こそが、「一生使えるクリエイティブな道具である」。いま、企業でも、大学でも、求められているもの、それが「教養」なのです。

☆なぜ池上彰が教養を?

日本には教養が足りない! でも、誰に教わればいい?
最強の「先生」が、大学の教壇に。
ジャーナリストの池上彰が、2012年4月から、東京工業大学に設置された教養コース、リベラルアーツセンターの教授として、
現代史などの「教養」を東工大の理系学生に教え始めた。本書は、2年間の授業を通じて、日本人に必須の「教養」について、わかりやすく解説。
勉強に、ビジネスに、人生に、趣味に、人間関係に、「教養」の重要性を、池上節で伝える内容。

(引用:Amazon.co.jp

 

池上彰の教養のススメ』は381ページ。読みやすい文体ではありますが、内容が充実していることもあり、読むのに1週間程度はかかりました。

 

池上彰の教養のススメ』勉強になったこと

教養を学ぶ意味

池上彰の教養のススメ』では、教養を学ぶ意味として「自分の存在が社会の中でどんな意味を持つのか、客観視できる力を身につけること」と書かれています。

様々な分野を学ぶことで高度な社会性を身につけ、自分と社会を見る「軸」を身につけることで、何が社会にとって良いことなのか、根本的なことを考えられるようになるそうです。

また、知識を身につけるだけではなく、コミットしていくような実践能力を兼ね備えていることが本物の教養であるとのこと。

 

哲学・宗教・生物学を学ぶ

池上彰の教養のススメ』では、哲学者の桑子敏雄先生、文化人類学者で宗教がご専門の上田紀行先生、生物学者本川達雄先生が、池上彰さんと対談しながら、なぜ各分野をテーマに研究しているのか等をお話ししています。

 

哲学

「人間とは何か」を問う学問である哲学。桑子先生は人間と自然との関係を考えたいと思ったことから、哲学者を志しました。

現在は社会的合意形成をご専門としているそうですが、合意形成を進める際に哲学の考え方を基にしているとのこと。

私はまちづくりのコンサルティングを仕事としているので、地域の方の意見をまとめなければならない場面がありますが、そんな時に哲学の考え方が役立つのかもしれないなと感じました。

 

宗教

今の日本社会の生きづらさを解消するためには、もう一度宗教を見直す必要があるという上田先生。

日本では会社やお金といった合理主義で生きている人が多いですが、それだと社会が危うくなると書かれています。

宗教のほかにも家庭や趣味などを大切に生きていくことで、合理主義から脱却し、リスクを分散していくのが良いというのが上田先生の考え方です。

「なんか生きづらいな…」そう感じる方は一度宗教を学んでみるのもいいかもしれませんね。

 

生物学

池上彰の教養のススメ』には、「人を知りたければ、生物学を学べ。」と書かれています。

例えば、組織は大きい方がいいのか?小さい方がいいのか?という問題に対しても生物学の視点から考えています。

生物の世界ではあらゆる大きさの生物がサバイバルしていますが、その生き残りの第1条件は「大きいか/小さいか」ではなく、規模にあった生存戦略をもっているかどうか、だそうです。

このように人間社会について考えるヒントが、生物学を学ぶことで得られるようですね。

 

教養を学ぶのにおすすめの本

池上彰の教養のススメ』ではいくつかおススメの本が紹介されています。

今後私自身「読んでみたい」と感じた本をまとめておきます。

 

 

終わりに

最近、仕事は楽しいけれど、本質的な解を見いだせていないな…となんとなく感じていました。

この本を読んでみて、仕事に関する専門書ではなく、教養に関する本を読むことで、その解が見つけられるようになるのかもしれないと思いました。

一方で自身の専門分野に関して、もっと勉強することも必要だなと思うので、専門と教養のバランスをどう取っていくかが難しいですね。