『八つの日本の美意識』(読書感想)

この記事では『八つの日本の美意識』の紹介、読んだ感想をまとめています。

 

映画"HOKUSAI"を観て、北斎が活動した時代背景などはよくわかりました。

しかし、どのような価値観・考え方を基にして、絵を描いていたかはよくわからなかったので、『八つの日本の美意識』を読んでみることにしました。

 

 

『八つの日本の美意識』本の概要

建築・料理・デザインはもとより、人間の存在そのものにおいて、世界的に、日本の文化と美意識についての関心が高まっている。ともすれば日本人自身が忘れがちなその美意識を再認識するための必読書。

(引用:Amazon.co.jp

 

 

『八つの日本の美意識』は全189ページ。読みやすい文章なので3~4日で読み終わりました。

 

『八つの日本の美意識』勉強になったこと

『八つの日本の美意識』では、日本の美意識を理解するためのキーワードとして以下1~8を挙げています。

 

❶微

細部に全てが含まれるという意識。(ex.短縮後、幕の内弁当、"一期一会")

細部が全体への配慮を持っているということでもあり、日本の都市にもその構造が表れている。

日本では個々の家屋が中心で、それらが単に集合することで、都市が出来上がっている一方、西洋では都市が優先され、建築はその一部分に過ぎない。

そのため、日本人は自分を中心とした空間の捉え方をするようになり、公共意識が欠如しているのではないかというのが黒川氏の主張。

 

❷並

並列的な、上下関係のない複数の細部の単なる集合だけで、調和が生まれるという考え方。

日本人は宗教さえも並列的に扱うため、同時に複数の宗教を持つことができる。

また、西洋が「罪の意識」を価値基準としているのに対し、日本は「恥の意識」を価値基準としていて、他者への気遣いによって秩序が成り立っている。

 

❸気

人はその身体から周辺に"気配"という空間の広がりを持っていて、その外に拡がる空間も人に属する。

日本の家屋は、複数の柱や梁が寄り集まって、その気配が重なり合ってできている。

また、一軒一軒が隣の家の"気配"を感じながら、"間合い"を設けてつくられていく集合のかたちが、日本の街や村。

 

❹間

「気」が空間や時間となったものが「間」。

日本では、建築自体が柱と梁で囲まれて生まれる「間」として作られた。(ex.居間、床の間など)

また、絵画では、「間」(余白)を描くことで、受け手が参加しやすいように仕掛けられている。

 

❺秘

全てを表現しないことで受け手の想像力を駆り立てること。

人の心に働きかけて、その想像力を刺激して、知る気にさせる仕掛け。

 

❻素

そのままが一番美しい、できることなら手を加えない方がいいという考え方。

自然への大きな信頼と、人の技を「見せる」ことへの否定が、この考え方の根底にある。

また、つくることを最少にしようという姿勢は、ものづくりの原型的な発想を生み出した。(ex.着物、数寄屋)

 

❼仮

生きているのも死ぬのも、みんなたまたまそうなのだということを認めようという考え方。

移り変わるこの世界のすべてを受容しようという意識が、「仮」の背後にある。

 

❽破

最も破壊的な瞬間に、最も生命的なことが起こるという考え方。

千利休の「守破離」では、「その道を極めるためには、修練を積まなくてはならない。そうして、もうこれ以上どうすることもできないというところにきたとき、伝統的な型を破り、自分独自の新しい世界を見つけることができる。」と言われている。

 

終わりに

『八つの日本の美意識』を読み、日本人の価値基準などについて学ぶことができましたが、あまり日本のアート作品をしっかりと見てこなかったため、ここで書かれていることが合っているのかどうか、あまり腑に落ちませんでした。

 

日本のアート作品の展覧会にも足を運んで、上記の美意識が作品の中に見つけられるかどうか、確かめてみたいと思います。